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ABC予想とIUT理論の可能性

 

今回は、ABC予想を証明した望月教授ととても親しい加藤教授の著書「宇宙と宇宙をつなぐ数学」について簡単に説明していきたいと思います。

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ここで、皆さんに注意していただきたいことがあります。

 

この本は、ABC予想を証明することよりも、その証明に用いられたIUT理論の概念を我々、一般人にもわかりやすく伝えることに重点を置いています。

  

なので、この記事の内容も必然的にIUT理論の内容の説明になります。

 

とはいうものの、まずは、ABC予想、どういうものか、ご紹介します。

 

 

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簡単に言うとこういうことですが、意味がわからない人もいると思います。

 

では、例を挙げて説明していきましょう。

 

 

ABC予想は、1985年、スイスのデビッド・マッサー氏とフランスのジョセフ・オェステルレ氏により提示された整数論の難問です。

 

 

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それは、a+b=cという単純な足し算から始まります。

 

 

正の整数aと整数bの「和」であるcと、三つの数a、b、cそれぞれの素因数の「積」を考えた時、和と積の間に、ある特別な関係があることを示しています。

 

 

具体的にa=1、b=8で考えると、aとbの和は「1+8=9(c)」となりますね。

  

次に、b=8は「2×2×2」と素因数分解できるので素因数は2。

 

同様にc=9は「3×3」で素因数は3となります。 

aは1なので素因数はない。

すると、a、b、cそれぞれの素因数の積は「2×3=6」となる。この場合、和であるc=9と、積である6を比べると和が積より大きいです。

 

しかし、実は、無数にあるa、b、cの組み合わせを試すと、ほとんどで、積が和より大きくなります

  

ABC予想は和が積より大きくなるのはとても珍しい、ということを主張しているのです。

  

単純な足し算とかけ算をして大小を比較しているだけなのに、証明するのはとても難しいです。

ABC予想がどういうものかご理解いただけましたでしょうか?

 

ここから、本題に入っていきたい思います。 

 

 

IUT理論の正式名称は、宇宙際タイヒミュラー理論です。

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望月教授

 

 

まず「IUT理論」では、「複数の数学世界」について考えます。これはイメージしにくいので、「数学のルールがまったく異なるいくつかの世界」程度に捉えてください。

何故そんなことを考えるのでしょうか?

 

その理由は、「足し算と掛け算を分離するため」です。

  

これもまた非常に難しいですが、とりあえず「足し算」と「掛け算」のことは脇に置いて、「正則構造」と呼ばれるものについて考えます。

 

正則構造」とは、「2つの要素が一蓮托生となっているもの」のことです。

 

 

例えば、「正方形」について考えてみましょう。

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「正方形」というのは、「縦の長さ」と「横の長さ」が同じ図形です。

  

 

そして、「縦の長さ」だけを固定したまま「横の長さ」を変化させることは出来ません。

 

それをしてしまえば「正方形」ではなくなってしまうし、「正方形」という条件を保つためには、「縦の長さ」が変化する時は「横の長さ」も変化しなければなりません。

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このように、「縦の長さ」と「横の長さ」という「2つの要素」が「一蓮托生」になっているものを「正則構造」と呼びます。

  

そして、数学の世界においては、「足し算」と「掛け算」も「正則構造」の関係にあるのだそう。

 

つまり、「一蓮托生」です。

 

だから、「足し算」の方をそのままにして「掛け算」だけを変化させる、などということは出来ません。

 

 それをやってしまうと、「僕らが使っている数学のルール」が壊れてしまうし、それを壊さないためには、「足し算」を変化させたら「掛け算」も変化させなければなりません。 

 

 

しかし望月教授は、この「足し算」と「掛け算」の「正則構造」をなんとか壊したかった。その動機の中心にあるのが、「ABC予想」を証明したい、というものです。

 

つまり、望月教授は、「足し算」と「掛け算」の「正則構造」を「うまく壊す」ことが出来れば、「ABC予想」の証明にたどり着けるのではないか、と考えたのです。

 

彼はその発想を得てから、2年間考え続けた。その結果、「今の数学の体系では不可能」という結論に至ったそうです。

 

 

「足し算」と「掛け算」の「正則構造」を壊すということは、「僕らが使っている数学のルール」を壊すということにあたるからです。

 

しかし彼は、ここで諦めませんでした。

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彼はその後、「今の数学の体系では不可能なら、複数の数学世界について考えれば突破出来るのではないか」という、超絶アクロバティックな発想に行きつきます。

 

 

では、「複数の数学世界」について考えるとどんな良いことがあるのでしょうか?

 

 

 

それを本書では「女優」を例にとって説明してあります。

 

 

Aという名前の女優」がドラマの中で「Bという名前の教師」を演じるとします。

 

 

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するとこの人物は、「同じ」人物でありながら、「現実世界ではA」「ドラマの中ではB」という「違う」人物として存在出来ます。

 

つまり、「複数の世界」を想定することで、「『同じ』でありながら『違う』」という矛盾をギリギリ成立させることが出来るようになるのです。 

 

「足し算」と「掛け算」を分離するというのも、1つの世界しか考えなければ明らかに成立し得ない矛盾ですが、複数の世界を想定することで、ギリギリその矛盾を成立させられるかもしれないということです。

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そうなると、次に考えなければならないことは、その複数の数学世界同士の「通信」です。

 

 

 

複数の数学世界がある、というだけで、互いに無関係であれば、なんの意味もありません。複数の数学世界を想定することで、何か意味のある成果を得ようとすれば、その世界同士で何らかの「通信」が成り立つ必要があります。 

 

しかし一方で、その世界同士が簡単に「通信」出来てしまう、というのも困ります。

 

 

簡単に「通信」出来るということは、その世界同士にあまり差がないということになりますが、今実現したいことは、「足し算」と「掛け算」を分離するという1つの数学世界では不可能なことであり、世界同士の差は大きくなければ実現できそうにありません。

  

 

つまり必然的に、「通信」もある程度困難でなければならない、ということです。

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まったく「通信」出来ないのも困りますが、「通信」が易しすぎても困ります。 

そういう条件を満たすものとして望月教授は「対称性」に目をつけました。

 

 

 

「対称性」が何であるかはここでは説明しませんが、イメージとしては、「ある情報を復元するための性質」程度に思ってください。

 

例えば「赤くて丸い果物」という「性質」を「通信」することで、「りんご」という情報が復元できる、というようなイメージです。

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しかし、この「通信」には問題があります。それは、正確に伝わらない、ということです。

 

元々この「通信」には「困難なものでなければならない」という制約があったのだから当然です。

 

 

例えば「赤くて丸い果物」という「性質」を「通信」しても、受け取った側は「さくらんぼ」として情報を復元するかもしれません。

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同じように「IUT理論」における「通信」では、「対称性」から元の情報を完全には復元できない、ということが問題になります。

 

 

では、「どの程度復元できない」のでしょうか?

 つまり、「通信」した情報は「どの程度歪む」のでしょうか。 

 

「IUT理論」は、その「歪み」を定式化(式の形で表現)出来る、と主張します。

まさにこの点こそが、「IUT理論」の真骨頂です。

 

 

「IUT理論」では、この「歪み」を、ある不等式で表しています。

  

 

つまり「IUT理論」とは、

複数の数学世界同士の通信を考えた時、その通信による情報の歪みをある不等式で表すことが出来る

と主張する理論なのです。

 

これで、自分が理解している限りの「IUT理論」の説明は終わりです。

 

 

ここでは、紹介しませんでしたが、本書の前半では、「IUT理論は数学者にどう受け入れられたのか」や「数学者の仕事とはどういうものであるか」など、面白い話も満載です。

 

 

IUT理論は、いかがだったでしょうか?

 

もちろん、世界でも数人しか理解できない難しい理論なので、首をひねられた方も多いと思います。しかし、知的興奮を抑えられないとても興味深い理論です。私も、この理論と遭遇したとき、とてもゾクゾクしました。

 

 

ちなみに、ABC予想が証明されると、フェルマーの最終定理ポアンカレ予想も簡単に証明することができます。

 

 

もっとIUT理論を深く理解したいと言う人は、ぜひ「宇宙と宇宙をつなぐ数学」を読んでみてください。

 

また、IUT理論の精密な仕組みを動画で表したものもあるので、興味のある方は、見てみてください。

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