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次元定理とは? 線形代数における重要定理

今回は、線形代数の中でも有名な次元定理についてご紹介します。


次元定理では、証明に数式が多く使われるので、数式を見たくないと思われるかもしれません。


なので次元定理を考えやすい具体例で紹介しましょう。

具体的な例

皆さんがカメラで写真を撮る場合を思い浮かべてください。


カメラで写真を撮る時、3次元の風景2次元の静止画に写し取りますね。


このとき、1次元消えています。


消えてしまった1次元と静止画の2次元をたすと元の3次元にもどります。

つまり、2+1=3というわけです。

拍子抜けされた方も多いと思われます。当たり前ですよね。

このように、(元の次元)=(写し取った先の次元)+(消えた次元)となります。

この式のことを次元定理といいます。


正直、次元定理の本質はこの部分なので、ここまでの議論で十分ですが、さらに数式を使って理解したい方は、ぜひこの先も見てみてください。

ベクトル空間

                                                    ここでは、ベクトル空間についてその定義を書きます。


ベクトルと聞くと、矢印を思い浮かべるかもしれません。


ただ、大学の数学では、矢印も含めたもっと一般化したものをベクトルとよびます。


また、集合を形作る1つ、1つの要素のことをといいます。


ベクトル空間の元のことをベクトルとよびます。


実数全体の集合を$\mathbb{R}$とします。

定義でという言葉が出てきますが、$\mathbb{R}$の事と思ってください。

Def ベクトル空間

(空でない)集合$V$について、$V$の任意の元 $\mathbb{a}$ , $\mathbb{b}$に対して$\mathbb{a}+\mathbb{b}\in V$

Vの任意の元$\mathbb{a}$と$\mathbb{R}$の任意の元$k$に対して、$k\mathbb{a}\in V$が定義されていて、

次の1~8の性質を満たすとき$V$を$\mathbb{R}$上のベクトル空間という。


( 1 ) ベクトル加法の結合律
  $(\mathbb{a}+\mathbb{b})+\mathbb{c}=\mathbb{a}+(\mathbb{b}+\mathbb{c})$

( 2 ) ベクトル加法の可換律
   $\mathbb{a}+\mathbb{b}=\mathbb{b}+\mathbb{a}$

( 3 ) ベクトル加法の単位元の存在
   ある$\boldsymbol{0}\in V$が存在して、任意の$\mathbb{a}\in V$に対して$\mathbb{a}+\boldsymbol{0}=\mathbb{a}$

( 4 ) ベクトル加法の逆元の存在
   任意の$\mathbb{a}\in V$に対して$\mathbb{a}+\mathbb{x}=\boldsymbol{0}$となる$\mathbb{x}\in V$が存在して、この$\mathbb{x}$を$\mathbb{-a}$と表す。

( 5 ) ベクトル加法に対するスカラー乗法の分配律
   $k(\mathbb{a}+\mathbb{b})$=$k\mathbb{a}+k\mathbb{b}$

( 6 ) 体の加法に対するスカラー乗法の分配律 ( $l\in\mathbb{R}$ )
   $(k+l)\mathbb{a}=k\mathbb{a}+l\mathbb{a}$

( 7 ) 体の乗法とスカラー乗法の両立条件
   $k(l\mathbb{a})=(kl)\mathbb{a}$

( 8 ) スカラー乗法単位元の存在
     $\boldsymbol{1}\mathbb{a}=\mathbb{a}$

以上が ベクトル空間の定義です。


どれもあたりまえすぎるかもしれませんが、重要なことなので頭の片隅にでもおいていてください。


実際にやじるしも1~8の性質を満たしていることは、確認していただくとわかります。


先ほど、一般化したものといいましたが、具体的には、行列などもベクトルとなります。

基底

ここから、基底について話していきます。


基底をひとことで言い表すと、ベクトル空間を形作るために必要な不可欠な材料といったかんじです。


料理でたとえると、サラダを作るためのトマトやキャベツ、コーンなどの野菜にあたります。


下の図で言うと、基底は{$e_1 , e_2$}となります。

それでは、基底の定義を書いてみましょう。


Def 基底

$V$をベクトル空間として、$\mathbb{v_1} , \mathbb{v_2} , \dots , \mathbb{v_n}\in V$とする。


以下の2つの条件を満たすとき、${\mathbb{v_1} , \mathbb{v_2} , \dots , \mathbb{v_n}}$を$V$の基底という。

( 1 ) ${\mathbb{v_1} , \mathbb{v_2} , \dots , \mathbb{v_n}}$は$V$を生成する。つまり、任意の$\mathbb{v}\in V$を$\mathbb{v}={c_1}\mathbb{v_1}+{c_2}\mathbb{v_2}+\dots+{c_n}\mathbb{v_n}$と表すことができる。ここで、${c_1} , {c_2} , \dots , {c_n}$は全て実数である。

( 2 ) ${\mathbb{v_1} , \mathbb{v_2} , \dots , \mathbb{v_n}}$は1次独立である。つまり、${c_1}\mathbb{v_1}+{c_2}\mathbb{v_2}+\dots+{c_n}\mathbb{v_n}=0$ならば${c_1}={c_2}=\dots={c_n}=0$となる。


基底の定義はとても重要なので、覚えておいてください。


また、基底の個数$n$のことを次元といい、$\operatorname{dim}(V)$と表します。

核と像

次は、核と像についてです。

なんかまた難しそうな言葉が出てきたと思いますが、
今回は2つのベクトル空間$V , W$と写像$\varphi : V \to W$を考えていきます。

したの図を見てみてください。

ここで、核と呼ばれる$\mathrm{Ker}\varphi$とは、$W$の単位元である$\boldsymbol{0}$へと向かう$V$の要素の集まりのことです。

像と呼ばれる$\mathrm{Im}\varphi$とは、$V$の要素全部が$W$に送られたあとの$W$の中の集まりのことです。


ここから、しっかりと数学の言葉で書いていきます。


Def 核と像


$\mathrm{Ker}\varphi$$=${$\mathbb{v}\in V|\varphi(\mathbb{v})=\boldsymbol{0}$}

$\mathrm{Im}\varphi$$=${$\varphi(\mathbb{v})\in W|\mathbb{v}\in V$}

また、$\mathrm{Ker}\varphi$を、 $\mathrm{Im}\varphi$をという。

次元定理

おまたせしました。

いよいよ、ここから次元定理の紹介にはいっていきます。


まず、次元定理とは次のようなものです。


Thm 次元定理

$V , W$を有限次元ベクトル空間とする。

また、写像$ f : V \to W$を線形写像とすると、$\operatorname{dim}(V)=\operatorname{dim}(\mathrm{Ker}f)+\operatorname{dim}(\mathrm{Im}f)$が成り立つ。


最初の式(元の次元)=(写し取った先の次元)+(消えた次元)と見比べてみると、

$\operatorname{dim}(V)$が(元の次元)に対応していて、
(写し取った先の次元)と$\operatorname{dim}(\mathrm{Im}f)$が同じ意味で、(消えた次元)が$\operatorname{dim}(\mathrm{Ker}f)$を意味していました。


それでは、最後に次元定理の証明をしていきます。


Proof

${\mathbb{v_1} , \mathbb{v_2} , \dots , \mathbb{v_s}}$を部分空間$\mathrm{Ker}f$の基底、${\mathbb{w_1} , \mathbb{w_2} , \dots , \mathbb{w_r}}$を$\mathrm{Im}f$の基底とする。

ここで、各$i=1 , 2 , 3, \dots , r$に対して、$\mathbb{w_i}\in \mathrm{Im}f$なので、$\mathbb{w_i}=f(\mathbb{u_i})$となる$V$のベクトル$\mathbb{u_i}$がとれる。

当たり前だが、$\mathbb{u_i}$の個数と$\mathbb{w_i}$の個数は$r$でおなじ。

よって、${\mathbb{v_1} , \mathbb{v_2} , \dots , \mathbb{v_s} , \mathbb{u_1} , \mathbb{u_2} , \dots , \mathbb{u_r}}$が$V$の基底になることを示す。


基底の条件は、( 1 ) $V$を生成する、( 2 ) 1次独立、だったので、STEP1STEP2で分けて証明していく。


STEP1  $V$を生成する

${\mathbb{v_1} , \mathbb{v_2} , \dots , \mathbb{v_s} , \mathbb{u_1} , \mathbb{u_2} , \dots , \mathbb{u_r}}$が$V$を生成することを示す。

任意に$\mathbb{v}\in V$をとる。

これが、$\mathbb{v_1} , \mathbb{v_2} , \dots , \mathbb{v_s} , \mathbb{u_1} , \mathbb{u_2} , \dots , \mathbb{u_r}$の線形和で書けることを言えばよい。

$f(\mathbb{u_i})\in f(V)=\mathrm{Im}f$であり、$\mathrm{Im}f$の基底が、${\mathbb{w_1} , \mathbb{w_2} , \dots , \mathbb{w_r}}$だったので、

$f(\mathbb{v})={c_1}\mathbb{w_1}+{c_2}\mathbb{w_2}+\dots+{c_r}\mathbb{w_r}$ と書ける。(ただし、${c_1} , {c_2} , \dots , {c_n}$は全て実数)


また、$\mathbb{v}-{c_1}\mathbb{u_1}+{c_2}\mathbb{u_2}+\dots+{c_r}\mathbb{u_r}$というベクトルを$f$で移すと、


$f(\mathbb{v} - ({c_1}\mathbb{u_1}+{c_2}\mathbb{u_2}+\dots+{c_r}\mathbb{u_r})$
=$f(\mathbb{v}) - ({c_1}f(\mathbb{u_1})+{c_2}f(\mathbb{u_2})+\dots+{c_r}f(\mathbb{u_r}))$
=${c_1}\mathbb{w_1}+{c_2}\mathbb{w_2}+\dots+{c_r}\mathbb{w_r} - ({c_1}\mathbb{w_1}+{c_2}\mathbb{w_2}+\dots+{c_r}\mathbb{w_r})$
=$\boldsymbol{0}$

よって、$\mathbb{v} - ({c_1}\mathbb{u_1}+{c_2}\mathbb{u_2}+\dots+{c_r}\mathbb{u_r})\in\mathrm{Ker}f$であることがわかった。


${\mathbb{v_1} , \mathbb{v_2} , \dots , \mathbb{v_s}}$は、部分空間$\mathrm{Ker}f$の基底だったので、

$\mathbb{v} - ({c_1}\mathbb{u_1}+{c_2}\mathbb{u_2}+\dots+{c_r}\mathbb{u_r})$は、${\mathbb{v_1} , \mathbb{v_2} , \dots , \mathbb{v_s}}$の線形和で書けるので


$\mathbb{v} - ({c_1}\mathbb{u_1}+{c_2}\mathbb{u_2}+\dots+{c_r}\mathbb{u_r})$=${d_1}\mathbb{v_1}+{d_2}\mathbb{v_2}+\dots+{d_s}\mathbb{v_s}$


と表せる。(ただし、${d_1} , {d_2} , \dots , {d_s}$は全て実数)


よって、$\mathbb{v}={c_1}\mathbb{u_1}+{c_2}\mathbb{u_2}+\dots+{c_r}\mathbb{u_r}+{d_1}\mathbb{v_1}+{d_2}\mathbb{v_2}+\dots+{d_s}\mathbb{v_s}$


となるので、$V$は${\mathbb{v_1} , \mathbb{v_2} , \dots , \mathbb{v_s} , \mathbb{u_1} , \mathbb{u_2} , \dots , \mathbb{u_r}}$で生成されることがわかった。


STEP2 1次独立

${\mathbb{v_1} , \mathbb{v_2} , \dots , \mathbb{v_s} , \mathbb{u_1} , \mathbb{u_2} , \dots , \mathbb{u_r}}$が1次独立であることを示す。


${a_1}\mathbb{v_1}+{a_2}\mathbb{v_2}+\dots+{a_s}\mathbb{v_s}+{b_1}\mathbb{u_1}+{b_2}\mathbb{u_2}+\dots+{b_r}\mathbb{u_r}=\boldsymbol{0}$


と仮定する。これを、$f$で移すと、${\mathbb{v_1} , \mathbb{v_2} , \dots , \mathbb{v_s}}$は、部分空間$\mathrm{Ker}f$の基底だったので、


$\boldsymbol{0}+\boldsymbol{0}+\dots+\boldsymbol{0}+{b_1}f\mathbb{u_1}+{b_2}f\mathbb{u_2}+\dots+{b_r}f\mathbb{u_r}=\boldsymbol{0}$


つまり、${b_1}f\mathbb{u_1}+{b_2}f\mathbb{u_2}+\dots+{b_r}f\mathbb{u_r}=\boldsymbol{0}$ となる。


ここで、各$i=1 , 2 , 3, \dots , r$に対して、$\mathbb{w_i}=f(\mathbb{u_i})$となる$V$のベクトル$\mathbb{u_i}$がとれたので、


${b_1}\mathbb{w_1}+{b_2}\mathbb{w_2}+\dots+{b_r}\mathbb{w_r}=\boldsymbol{0}$ となる。


${\mathbb{w_1} , \mathbb{w_2} , \dots , \mathbb{w_r}}$は$\mathrm{Im}f$の基底なので、${b_1}={b_2}=\dots={b_r}=0$ということがわかる。


したがって、${a_1}\mathbb{v_1}+{a_2}\mathbb{v_2}+\dots+{a_s}\mathbb{v_s}+\boldsymbol{0}+\boldsymbol{0}+\dots+\boldsymbol{0}=\boldsymbol{0}$


書き直すと、${a_1}\mathbb{v_1}+{a_2}\mathbb{v_2}+\dots+{a_s}\mathbb{v_s}=\boldsymbol{0}$


${\mathbb{v_1} , \mathbb{v_2} , \dots , \mathbb{v_s}}$を部分空間$\mathrm{Ker}f$の基底としていたので、 1次独立となる。よって


${a_1}={a_2}=\dots={a_s}=0$となり、

${\mathbb{v_1} , \mathbb{v_2} , \dots , \mathbb{v_s} , \mathbb{u_1} , \mathbb{u_2} , \dots , \mathbb{u_r}}$が1次独立であることがわかった。



長かったですがようやく、証明終了です。

次元定理は、数学ではよく用いられるのでこの記事をふまえて、ぜひご自身でも勉強してみてください。



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